キャリアコンサルタントが使用するアセスメントツールを一覧形式でまとめます。
アセスメントツールはクライエント(相談者)をあらゆる角度から診断し、自分自身の自己理解やキャリア選択、キャリアプランニングのための適性を調べる診断ツールのことです。キャリアコンサルタント試験では必ず出題される知識になりますので、必ず覚えるようにしたいものです。
アセスメントツールの目的
キャリアコンサルタントがアセスメントを使う理由は以下の通りです。
漠然としたクライエントの内面を明らかにし、クライアント自身に気づきをもたらすほか、キャリアコンサルタントもクライアントを知るために役立ちます。
- クライエントの自己理解のため
- キャリアコンサルタントがクライエントを理解するため
- クライアントの特性と仕事の要件を比較してキャリア選択の適合性を判断するため
- キャリアに対する意思の強さを明らかにするため
- キャリアの興味・関心を明らかにするため
- クライアントが持つキャリア選択の妨げになる潜在的な信念を明らかにするため
フォーマルアセスメントとインフォーマルアセスメントの違い
アセスメントには、フォーマルアセスメントとインフォーマルアセスメントの二種類があります。
フォーマルアセスメントとインフォーマルアセスメントの違いをまとめました。
種類 | フォーマルアセスメント | インフォーマルアセスメント |
性質 | 実施方法が明確で誰でも実施できる | 体系化、規格化されておらず明確な基準や解釈はない |
方法 | 数値化、点数化されている | データだけでなく被験者の反応なども観察する |
傾向 | 客観的 | 主観的 |
テスト | 《知能検査》 ・ビネー式知能検査 ・ウエスクラー式知能検査 《性格・パーソナリティ検査》 ・Y-G性格検査 ・内田クレペリン精神作業検査 ・エゴグラム ・GATB厚生労働省編一般職業適性検査 ・VRT(職業レディネステスト) ・VPI(職業興味検査) | ・チェックリスト ・カードソード ・選択の強制 ・ガイドイメージ |
アセスメントツールの一覧
それでは、具体的にキャリアコンサルタント試験で出題されるアセスメントツールを細かく見ていきたいと思います。
VRT(職業レディネステスト)
VRT職業レディネステストは主に中学生から大学生の職業レディネス(レディネス=準備具合)を調べて、被験者の職業に対するセルフイメージや進路選択の参考にするための試験です。
ホランド理論に基づく6つの職業領域(現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、慣習的)に対する興味の程度と自信度がプロフィールで表示され、情報や人間関係、物関係のどれに興味関心を示すかの基礎的志向も測定されます。
目的:若年層に対して自己理解を深めてもらい、職業選択に対する考え方を学習する。
対象:中学生から高校生 (場合によっては大学生)
所要時間:採点を含め1時間。
実施方法:ワークシート
VRT職業レディネステストは、以下の通り、A検査、B検査、C検査の3つの検査から成り立っています。
A検査 | 職業興味 | 職業・仕事の内容を記載した54項目の質問を「やりたい、どちらともいえない、やりたくない」の3段階で回答。ホランドの6つの職業領域の傾向を測定。 |
B検査 | 基礎的指向性 | 日常の生活行動について64項目から質問。「あてはまる、あてはまらない、」の2者択一。職業興味のベースとなる対情報、対人間関係、対物関係の志向性においての興味、関心のどのような傾向があるかを測定 |
C検査 | 職務遂行の自信度 | A検査と同一の質問を「自信がある、どちらともいえない、自信がない」の3段階で回答。 |
VRTカード
VRTカードは、VRT職業レディネステストをカード化した簡便な職業興味検査アセスメントです。
職業レディネステストの職業興味と職務遂行の自信度に関する項目を1枚ずつ印刷した54枚のカードです。
目的:54枚のカードに書かれている仕事内容への興味や自信の程度が簡単に分かる。
対象:中学生、高校生
所要時間:平均3分。実施者の読み上げも含めて10分程度
実施方法:
以下のように表に職業の職務内容、裏に職業名とホランドの職業興味の6領域(RIASEC)に関する情報や基礎的志向性の3分類(DPT)が記号で書かれている。このカードを「やりたい」「やりたくない」に分類し、整理シートに並べて傾向を知る。
![](https://exam.teqteq.net/wp-content/uploads/2021/08/5eb7fc45fc56b55e870027e5cafc41ae.png)
![画像:カードの整理](https://www.jil.go.jp/institute/seika/vrtcard/images/cardimg03.jpg)
出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構
領域 | |
---|---|
現実的興味領域(Realistic) | 機械や物体を対象とする具体的で実際的な仕事や活動 |
研究的興味領域(Investigative) | 研究や調査のような研究的、探索的な仕事や活動 |
芸術的興味領域(Artistic) | 音楽、芸術、文学等を対象とするような仕事や活動 |
社会的興味領域(Social) | 人と接したり、人に奉仕したりする仕事や活動 |
企業的興味領域(Enterprising) | 企画・立案したり、組織の運営や経営等の仕事や活動 |
慣習的興味領域(Conventional) | 定まった方式や規則、習慣を重視したり、それに従って行うような仕事や活動 |
領域 | |
---|---|
D志向 (情報関係志向) | 各種の知識、情報、概念などを取り扱うことに対する志向性 |
P志向 (人間関係志向) | 主として人に直接関わっていくような活動に対する志向性 |
T志向 (物関係志向) | 直接、機械や道具、装置などのいわゆる物を取り扱うことに対する志向性 |
GATB(一般職業適性試験)
GATBは、自己理解と職業理解を測定します。
適性な職業を測定し自分の能力や適性が分かるとともに希望する職業に必要な知識や能力が分かるようになっています。
制限時間内にできるだけ速く正確に回答するかで測る点も特徴的です。
目的:仕事で必要になる9つの「適性能(知的能力、言語能力、数理能力、書記的知覚、空間判断力、形態知覚、運動共応、指先の器用さ、手腕の器用さ」を測定し、自己理解や適職の探索、望ましい職業選択を行うため。
対象:13歳(中学生)〜45歳未満。
所要時間:紙筆検査(45分〜50分)、器具検査(12分〜15分)
実施方法:紙筆検査(筆記)と器具検査(手先などの器用さを測定する器具)
GATBでは以下の9つの適性能が測定されます。
適性能 | 内容 |
---|---|
G−知的能力 | 一般的学習能力 |
V−言語能力 | 言語の意味およびそれに関連した概念を理解し、それを有効に使いこなす能力。言語相互の関係および文章や句の意味を理解する能力。 |
N−数理能力 | 計算を正確に速く行うとともに、応用問題を推理し、解く能力。 |
Q−書記的知覚 | 言葉や印刷物、伝票類を細部まで正しく知覚する能力。文字や数字を直観的に比較弁別し、違いを見つけ、あるいは校正する能力。文字や数字に限らず、対象を素早く知覚する能力。 |
S−空間判断力 | 立体形を理解したり、平面図から立体形を想像したり、考えたりする能力。物体間の位置関係とその変化を正しく理解する能力。青写真を読んだり、幾何学の問題を解いたりする能力。 |
P−形態知覚 | 実物あるいは図解されたものを細部まで正しく知覚する能力。図形を見比べて、その形や陰影、線の太さや長さなどの細かい差異を弁別する能力。 |
K−運動能力 | 眼と手または指を共応させて、迅速かつ正確に作業を遂行する能力。眼で見ながら、手の迅速な運動を正しくコントロールする能力。 |
F−指先の器用さ | 速く、しかも正確に指を動かし、小さいものを巧みに取り扱う能力。 |
M−手腕の器用さ | 手腕を思うままに巧みに動かす能力。物を取り上げたり、置いたり、持ち替えたり、裏返したりするなどの手腕や手首を巧みに動かす能力。 |
OHBYカード
OHBY(オービィ)カードは、カード式職業情報選択ツールで、430職種の職業情報を、写真、イラスト、チャート、動画で紹介する職業ハンドブックであるOHBYの内容を48枚のカードに必要最低限にまとめたアセスメントツールです。
目的:自分の興味や関心を知ると同時に職業選択において知っていくべき必要最小限の職業情報を知るため。職業理解と自己理解。
特徴:表面に絵や写真、裏面に文字情報で職業が紹介されている。
対象:児童・生徒から若者、中高年まで幅広く
実施方法:1対1のカウンセリング場面で使用する方法、グループ形式で使用する方法、学校の授業で使用する方法などで、カードを興味あるなしで分類する。
ステップ1 | 表面の絵や写真を見て自分なら選択する職業と選択しない職業、そして「考え中」の3つに分類する。 |
ステップ2 | 選択しなかった職業について、その職業を選ばなかった理由が似ているものどうしを分けて、裏面をみてどんな特徴の職業なのかを理解する。 |
ステップ3 | 選択した職業で好みの順番に10職業を選んで順位をつける。その後、裏面をみてどんな職業なのかを理解する。 |
![](https://www.jil.go.jp/institute/seika/ohby/images/ohbycard.jpg)
出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構
職業興味検査VPI
職業興味検査VPIは、ホランドによるVPIの日本版。6つの興味領域(現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、慣習的)に対する興味の度合いと5つの傾向尺度(自己統制、男性-女性、地位志向、稀有反応、黙従反応)を測定する。
目的:職業選択や働くことの動機付け、情報収集、キャリアガイダンスのためのアセスメント。
対象:13歳(中学生)〜45歳未満。
所要時間:15分〜20分。最大で30分。
実施方法:160の職業名に対して興味の有無を回答。実施・採点はカーボン式。
6つの興味領域
領域 | |
---|---|
現実的興味領域(Realistic) | 機械や物体を対象とする具体的で実際的な仕事や活動 |
研究的興味領域(Investigative) | 研究や調査のような研究的、探索的な仕事や活動 |
芸術的興味領域(Artistic) | 音楽、芸術、文学等を対象とするような仕事や活動 |
社会的興味領域(Social) | 人と接したり、人に奉仕したりする仕事や活動 |
企業的興味領域(Enterprising) | 企画・立案したり、組織の運営や経営等の仕事や活動 |
慣習的興味領域(Conventional) | 定まった方式や規則、習慣を重視したり、それに従って行うような仕事や活動 |
5つの傾向尺度
傾向尺度の名称 | |
---|---|
自己統制尺度(Self-Control) | 自己の衝動的な行為や考えをどの程度統制しているか |
男性−女性傾向尺度(Masculinity-Feminity) | 伝統的な性役割にどの程度こだわっているか |
地位志向尺度(Status) | 社会的威信や名声、地位や権力をどの程度重視するか |
稀有反応尺度(Infrequency) | 職業に対する見方がどの程度ユニークであるか |
黙従反応尺度(Acquiescence) | どの程度幅広くさまざまな職業に関心を持っているか |
キャリアインサイト
キャリアインサイトは、利用者自身がPCで職業選択に役立つ適性評価、適性に合致する職業リストの参照、職業情報の検索、キャリアプランニングを実施する総合的なキャリアガイダンスシステム(CACGS)。(PC限定)
目的:職業選択のための適性評価、適性に合致した職業リストの閲覧、職業情報の検索、キャリアプランニング
対象:18歳〜34歳の職業経験の少ない若者。35歳以上で職業経験のある求職者は「キャリアインサイドMC(ミッドキャリア)」を統合して利用。
実施方法:ソフトがインストールされたPCで実施する。利用者の好きな機能を利用する。全部を利用する必要はない。また1人で利用できる。
※ 試験問題には、スマートフォンで受講できると書かれた問題が出題されたことがありますが、専用のソフトがインストールされたパソコンだけです。